ブロッケン山のおこめつぶ

私の中のもうひとりの私


今年前半を終了し、暑さが勢いをますこのごろ。
STAMP×STAMPワークショップ 第2回を終え、
おこめつぶはただ今、静養も兼ねて家で地味に過ごしております。

ドライフラワー

春からイベントにワークショップにと駆け抜けて来ましたが、
同時に、体調不良に祟られ続けた上半期でもありました。

この世に生まれて、はや半世紀も経とうかというワタクシ。
あちこちガタが来てもしょうがなくはありますが、
にしても、やらねばならんことがあるというのに、
体が思うように動いてくれない。
なかなかつらい日々でした。

は〜。
病気じゃないのに、相当具合が悪い。それも毎日。
なにをするにも体に不安があると、だんだん気持も沈んできます。
初めて経験するような症状ばかりで、自分への不信感も募ります。
これまで、自分の体のことは自分が一番わかっていると思ってましたが、
今はなにをどうすればいいのか、さっぱりわかんない感じです。

いったい今の私は何者なんでしょう?
こんな人、私のなかにいましたっけ?
おばさんからおばあさんになるため「調整中」の張り紙がされてるだけだと、
人は言いますが、トイレの故障じゃあるまいし、
調整はいったいいつまで続くんでしょうか?

時として、戸惑いや不安が押し寄せて来たりします。



話は変わりますが、
ブログを始めた頃、読んでくれた古い友人から
「てっきり映画のブログだと思ってた」と言われたことがあります。
そして、たまには映画や本についても書いてほしいとリクエストされました。

はんこ活動をするうえで始めたブログなので、
他の趣味になかなかページを割けませんが、
実は生活の大部分を本や映画とともに過ごしている、
これももうひとりの私。
はんこや切手という新しい趣味に押されて、
映画を観る時間も減ってしまった現在ですが、
「いったい今の私はなんなのか?」
そんな日々に、ふと映画のことを書いてみたくなりました。


相当長くなりそうなので、
ご興味ない方は、このへんでどうぞスルーしてくださいませ。


映画の趣味も、多分相当偏ってるかと思います。
『ゴーン・ガール』も『マッドマックス』も、『バードマン』さえ出てきませんが、
2015年上半期に観た新作映画私的ベストを、
あくまで個人的な感想とともにご紹介したいと思います。

上半期新作

上段左より
1『神々のたそがれ』/アレクセイ・ゲルマン監督
2『マミー』/グザヴィエ・ドラン監督
3『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』/フレデリック・ワイズマン監督
下段左より
4『イタリアは呼んでいる』/マイケル・ウィンターボトム監督
5『ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して』/アルノー・デプレシャン監督
6『マップ・トゥ・ザ・スターズ』/デヴィッド・クローネンバーグ監督

いろいろ面白い映画があったとは思いますが、
正直1『神々のたそがれ』と2『マミー』があまりに強烈で、
他がかすんでしまった感が。

1 ロシアのSF映画です。でも、それではまったく伝わらない、
 とてつもない映画でした。
 おこめつぶの映画鑑賞史上1、2を争う不快な映像が3時間を超えて展開されます。
 映っているのは全編
 その不快さ、見苦しさはまさに、監督の怒りや憎悪、絶望の表現で、
 地球より文明の遅れた別の惑星で展開される物語は、
 要するに表面だけ現代人ぶってても、
 永遠に野蛮で愚かであり続ける人類への痛烈な批判。
 それを全身全霊で描ききる。よくぞこんなものが撮れたものだと驚嘆しました。
 そして時々、渦巻く泥や肉を掻き落とすようにして立ち上がって来る、
 奇跡的に美しい映像…。
 昔々、若くて頭でっかちだった私は、
 同じくロシア(旧ソビエト)の巨匠、タルコフスキーの映画を観ながら
 「人間は神にはなれないんだな…」とか思ったりしてましたが、
 この映画では「案外神様、やれてるやん」と、
 泥まみれでも、絶望しきっていても、現実と関わり続ける、
 なんだか生き物の底力のようなもんも感じたりして。
 監督のみならず、この映画に携わったスタッフ、キャスト、
 すべての人に敬意を表さずにはいられない、
 超ド級にエネルギッシュでクリエイティヴィティ溢れる作品。
 誰かにオススメはしにくいですが、
 自分自身は生きてるうちに観られてよかった1本でした。

2 今年のカンヌで審査員賞を受賞し、さらに勢い加速中のドラン監督。
 『私はロランス』以来私も大注目で追いかけていますが。
 『マミー』と前後して主演作『エレファント・ソング』も観ましたが、
 やっぱり監督作にはかなわない感じがしました。
 新感覚のスタイリッシュな映像とか、斬新な仕掛けとかそういうのはさておき、
 人と人とがどういうふうに出会い、どういうふうに別れるか
 リアルにエモーショナルに描かれていて、毎回言葉もないです。
 人間が生まれて死ぬように、人間どうしの関係も生まれ、成長し、
 やがて死ぬことを、ほんとによくご存知で。
 まだ20代半ばという若さでそんなことを知ってるなんて、
 いったいこれまでどんな苦労をしてきたのかと思うと、
 思わず涙ぐんでしまうおばさんが、ここに一人。
 当分オアシスの“ワンダー・ウォール”を聴く度に、
 この映画を思い出しそうです。
 

3 どんなに長くてもあっという間に最後まで観てしまう、
 ワイズマンのドキュメンタリー、恐るべし。
 その場で起こっていることを、ただただ観察しているだけなんですが、
 映像からは常に、あらゆる情報を漏らさない集中力と、
 絶え間ない好奇心が伝わって来るような気がします。
 『パリオペラ座』、『クレイジー・ホース』に続き、
 『ナショナル・ギャラリー』も内情をバッチリ把握、
 明日からでも出勤出来そうです。
 とはいえ、90年代以前の作品をほとんど観ていない私。
 いつの日か、老人になって無制限の自由時間をゲットしたら、
 ワイズマンの作品を一気に鑑賞したい、そんな野望を抱いています。

4 人生の曲がり角にさしかかった中年男二人が、
 本国イギリスを巡った前作に引き続き、
 今度は舞台をイタリアに移して、ユル〜いグルメ旅。
 映画としてみると、面白いと言えるかどうか…。
 旅行中延々続くモノマネ合戦も、イギリスのテレビ事情や名作映画について
 ある程度明るくないと笑えないかも。
 観る人を選ぶ作品かもしれませんが、それでも、私がこれをここで挙げてしまうのは、
 スティーヴ・クーガンでも、ウィンターボトムでもなく、
 マイケル・ケインが大好きだ、ただそれだけです。
 そもそも前作のもとになったテレビ番組の存在を知ったのが、
 you tubeでケインの映像を検索していて、たまたまクーガンの
 モノマネに行き当たったから。そしてモノマネに開眼。
 モノマネって、愛と批評の化合物なんですね。

 マイケル・ケインは30年近く、彼が出てればどんなゴミ映画も
 ゴミなりに楽しい(そしてゴミ映画出演率も高い)、
 マイ・ベストアクターの一人です。
 ここ10年ほど、ケインに限らず、
 テレンス・スタンプやマルコム・マクダウェルといった
 ロンドン60〜70'sの顔役的男優さんが、
 彼らに憧れて育った若い世代の映画人からリスペクトされ、
 再びスクリーンに登場する機会が多くなったことは、
 オールド・ファンの私にとってもうれしい現象です。
 皆さん、軽く70歳超ですが、まだまだ現役。

DVD2本彼らの若い頃の作品を、
観ているもの、未見のもの含めて、
DVDでチマチマ
集め直すのも楽しい作業。
これまで集めたVHSは
もう役に立たないのでね。
数日前にも横浜で、
ほれ、この2本をそれぞれ →
ワンコイン強でシトメましたよ。

こういった長年のハンター生活が、
現在の切手狩りにも活かされております。


ケイン・ファンとして今一番楽しみにしているのは、
9月に公開されるマシュー・ヴォーン監督の新作『キングスマン』。
元ハリー・パーマーな以上、スパイ・パロディものには必ず顔を出す、
これも勤めです。そしてまたクーガンたちにモノマネされ、
おこめつぶが喜ぶ、いい流れができてます。

5 ちっこくてかわいいおじさん
 マチュー・アマルリックが大好きですが、
 やっぱりデプレシャン監督の作品に出ているときの彼が一番ステキ。
 アメリカで製作されたこの作品は、これまでのデプレシャンの
 流れる音楽のように軽やかな群像劇とはちょっと趣がちがいましたが、
 アマルリックとベネチオ・デル・トロ演じる精神分析医と患者、
 二人の人物の関わりにしっかり焦点が絞られていて、
 シンプルで観やすい作品になってました。
 二人はまた、ヨーロッパからの亡命者と先住民族の末裔という、
 アメリカ社会のなかのよそ者であり、
 それぞれがどうやって社会への順応を果たすのか?
 という文化人類学的な視点もあり、懐深かったです。
 
6『イースタン・プロミス』あたりから、
 私のなかで殿堂入りを果たしてしまったクローネンバーグ監督。
 面白かろうがなかろうが、彼の映画のタイム感を体感出来るだけで観る甲斐あり。
 若い頃はわからなかったんですけどね。
 この作品は、ハリウッドという歪んだ世界
 クローネンバーグの歪んだ感性の相性が抜群で、
 気分悪いのなんの(=ブラボー!)。
 ところで、『アリスのままで』のジュリアン・ムーアより、
 こっちのほうが女優として相当すごいことやってるように思えるのですが。
 どーでしょうか、皆さん?
 最近とみに得体の知れないジョン・キューザックにも、
 見たくないのに目が釘付けでした。

その他には、
『サンドラの週末』/ダルデンヌ兄弟監督
『ジミー 野を駆ける伝説』/ケン・ローチ監督
『ターナー 光に愛を求めて』/マイク・リー監督
など、見応えのある、いい映画がいろいろありました。
が、それぞれの長いキャリアで見応えのあるいい映画ばかり
作ってる方々の作品なので、面白くって当たり前とも言えますか。
それから私、イギリス映画ではビル・ナイが出ている映画と
出てない映画でこっそりジャンルを分けてるところがあって、
そういう意味でのビル・ナイ系映画『パレードへようこそ』も、
なかなか面白かったです(特にイメルダ・スタウントンが)。
ベネディクト・カンバーバッチ主演の話題作『イミテーション・ゲーム』は、
カンバーバッチより再現されたチューリング・マシンのほうにトキメキました。
ミシェル・アザナヴィシウス監督の『あの日の声を探して』も、
前作『アーティスト』から一変、ロシアのチェチェン侵攻というシリアスな題材と、
心に響くポエティックな作風が融合した、とても印象的な作品でした。


以上、今年前半に公開された新作映画から選びました。
(一部、昨年末から公開のものもあるかと思います)
並べてみると、イギリス映画がけっこう多いですね、今年は。
あ!エディ・レッドメインくんがオスカーをとった
『博士と彼女のセオリー』を見逃してるじゃないですか!
…今、気づきました。



そして次は、自分が今年観たというだけですが、
休憩時間のお楽しみDVDより、おもしろかったものを。
上半期DVD

上段左より
1 『エディ・コイルの友人たち』は73年ピーター・イエーツ監督の
 クライム・サスペンス映画。
 未見だった本作が、今年初DVD化ということで、さっそく拝見。
 まー、70年代臭ぷんぷんの地味で殺伐としたイヤな話(=ブラボー!)でした。
 ワルといっても、登場する皆さんはわりと小物。
 マフィアの使いっ走りや情報屋、武器調達係など、
 みみっちかったりあくせくしてるところが、
 かえって悲哀を感じさせてよかったです。
 怪優ピーター・ボイルの本領発揮を堪能したり、
 ロバート・ミッチャムの拳のアップに思わず「LOVE」と「HATE」の文字を
 幻視したり、個人的楽しみどころも満載でした。

2 これもついに初DVD化という情報をキャッチ、
 それだけで懐かしくなって衝動的に観てしまいました。
 アメリカの男ってもんを撮り続けたロバート・アルドリッチ監督の遺作
 『カリフォルニア・ドールズ』(81年)は、
 明日を夢見てドサ回る女子プロ・コンビと口八丁手八丁のマネージャー、
 3人の人情ロードムーヴィー。
 ついにたどり着いたタイトルマッチのリングにのぼる二人の登場シーンは、
 何度観ても泣けます。泣かずには観られません、あまりに美しすぎて。
 にしても、この映画のバート・ヤングや1のピーター・ボイルみたいな、
 社会の沈殿物をそのまま人にしてみたようなばばちい悪役って、
 今はもうあまりスクリーンで観ることができませんね。すごく寂しいです。

3 今年の元旦に「映画鑑賞初めだから、なんか縁起のいいものを」
 と思って選んだのが、これ。
 マキノ雅弘監督のオペレッタ時代劇『鴛鴦(おしどり)歌合戦』(39年)。
 いや、ほんとに楽しくて、観ながらずっと揺れてました。♪ボクは若〜い殿様〜♪
 なんかジーンとしますよ、あまりにもピュアで。

下段左より
1 『レイ・ハリーハウゼン 特殊効果の巨人』には、
 時間のないときに「ちょっとだけ」とつけて、
 結局最後まで観てしまい、予定を台無しにしたつらい思い出が。
 ドキュメンタリーとしては普通の出来で、
 ほとんど過去作品の映像とインタビューなんですが。
 でも、ハリーハウゼンのクリーチャーが動き出すと、途中で止められない
 あの独特のエキゾチックなデザインと動き、
 子供の頃に呪いをかけられたかのように、今も惹き付けられます。

2 最近「やたら安かったから」とダンナがAmazonで購入した、
 フレッド・アステア大全集。
 パッケージからもわかるように、
 デザインとかめちゃくちゃな10本パックの超廉価版。
 でも、いいんです、観られれば。
 注文して着いたその日に、二人とも未見だった『恋愛準決勝戦』、
 床から壁へ、壁から天井へ、360度回転ダンスを鑑賞しました。
 やっぱすごいよ、アステアは!

3 横溝正史&金田一耕助DVDシリーズの発売が2月に始まり、
 角川映画の横溝シリーズが好きすぎて、テレビ版をなおざりにしていた我々も、
 この機会に便乗して鑑賞を開始。
 が、すぐにキング版の中古ハントに切り換えました。
 現在、『犬神家の一族』『悪魔が来たりて笛を吹く』『三つ首塔』を鑑賞終了。
 フィルムで撮影された画像の質感、時代を感じさせる演出、たまらないです。
 切れると禁断症状が。ああ、早く次のを見せてくれ…



映画やDVDの話をしていたら、なんか体があったまってきましたよ。
好きなものについて語ってると、時間を忘れてしまいますね。
いつのまにか、動悸、息切れもどこへやら…
体調のせいで関西まで遠征できそうにないこの夏ですが、
映画好きの友人にはこのブログを読んでもらうことにしましょう。


おお、そーか!
体調不良の夏は、いっそ家中山積みのDVDを観て過ごせと、
そういうことですね!ガサゴソ、ガサゴソ(←早くも物色する音)

もちろんそれで問題が解決するわけではないですが、
少なくとも不調を気に病んで暗くならずにすみそうです。
ちょっとだけ光が見えた、のかほんとに?



長々と手前勝手な拙文を綴ってしまったにも関わらず、
ここまでお付き合いくださった方がおられましたら、
どうもありがとうございました!
しばらくブログのほうも夏休みっぽくなりそうですが、
気がむいたら、またぜひのぞきに来てくださいね〜

また、固有名詞の表記や情報確認には気をつけておりますが、
なにぶん素人の感想文、表記間違い、事実誤認等などあった場合は、
どうかご容赦くださいますよう、よろしくお願いします。



< おまけ >

しまった!

の映画、といえばホラー
自称ホラ女だというのに、ホラーを紹介し忘れました!(誰もいりませんかね)
が、今年観たホラーは多分、なにもする気にならないときに
ぼんやり観直した『血に飢えた白い砂浜』(81年)ぐらいで…

しかたないので、我が家の怪猫ダリオに、
「みんなが怖がるようなこと、なんかやってよ」
と頼んだところ、

ダリオ納涼
う〜

ら〜

め〜

し〜

や〜





案外基本に忠実な猫でした


いただいたコメントへのお返事は、少し時間がかかるかもしれません。

それでも、出来る限りちゃんとお返事したいと思っておりますので、ご容赦ください。

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